安全管理とリスクマネジメント
「危ないからダメ!」と子どもの挑戦の芽を摘んでいませんか?子どもを無菌室に入れるのではなく、「安心して挑戦できる環境」を意図的に作ることこそ、私たちの専門性です。この記事では、事故を未然に防ぐ「リスクマネジメント」の基本サイクルから、重大事故の背景に隠れた300のサインを見つける「ヒヤリハット報告」の本当の意味、そして危険を予知する目を養う「KYT」まで、子どもの安全を「文化」として根付かせるための具体的な手法を解説します。
1. はじめに:「安全」と「挑戦」を両立させる専門性
子どもの発達には、少し高いところに登ってみる、新しい遊具で遊んでみる、といった適度な挑戦が不可欠です。私たちの役割は、子どもを無リスクな環境に閉じ込めることではなく、起こりうる危険を予測し、備え、組織的に管理することで、子どもたちが「安心して挑戦できる環境」を意図的に構築することです。リスクマネジメントは、運や偶然に頼るのではなく、私たち専門職に必須のスキルです。
2. リスクマネジメントの基本サイクル
リスクマネジメントとは、単に「気をつける」といった精神論ではなく、4つのステップからなる継続的なプロセスです。
リスクマネジメント 4つのステップ
リスクの発見
危険(ハザード)を洗い出す
分析・評価
頻度と重大さで優先順位をつける
リスクへの対策
除去・低減・移転・保有を検討
共有・見直し
対策をチームで共有し、改善を続ける
【重要】挑戦を奪わないバランス感覚
全ての危険を取り除くことが良い支援とは限りません。「排除すべき許容できないリスク」と、子どもの発達に必要な「管理しながら許容できるリスク(挑戦)」を専門職として見極める必要があります。
3. 事故の芽を摘む「ヒヤリハット報告」
ヒヤリハットとは、「重大な事故には至らなかったものの、一歩間違えれば事故になっていた事例」のことです。これは事故を未然に防ぐための最大のヒントです。
ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)
1件
重大な事故
29件
軽微な事故
300件
ヒヤリハット(事故の芽)
300件の「事故の芽」の段階で対策を講じることが、重大事故の防止に最も効果的です。
ヒヤリハット報告は「宝の山」
ヒヤリハット報告は、決して「失敗報告」や「反省文」ではありません。職場の安全性を高めるための極めて価値のある「情報提供」です。報告者を責めるのではなく、「報告してくれてありがとう」と感謝する「安全文化」を醸成することが重要です。
4. 「危険を予知する目」を養う:危険予知トレーニング(KYT)
KYTとは、職場のイラストなどを用いて、そこに潜む危険について話し合い、安全な行動を確認し合う訓練です。これにより、職員一人ひとりの「危険を予知する感受性」を高めることができます。
KYT 4ラウンド法
5. 万が一の時、冷静に行動するために:事故発生時の対応
どれだけ対策を講じても、事故の発生をゼロにすることはできません。万が一の際にパニックにならず、冷静かつ迅速に行動するために、対応フローを全職員で共有しておく必要があります。
事故発生時 対応の優先順位
子どもの安全確保と救護
被災した子の安全確保、応急手当、応援要請と役割分担を最優先で行う。
関係各所への連絡
救急車(119番)要請、保護者への連絡、管理者・関係機関への報告を行う。
記録と他の子どもへのケア
客観的な事実を記録し、他の子どもの心のケアを行う。
グループワークで考えてみよう
<危険予知トレーニング(KYT)体験>
[ここに、室内で数人の子どもが遊び、職員が一人いるイラストを挿入。 イラストには、棚の上に不安定に置かれた物、床に転がったおもちゃ、コンセントにフォークを差し込もうとしている子など、複数の危険が描かれている]
<話し合いのポイント>
- 現状把握: これはどんな状況ですか?
- 危険のポイント探し: この中に潜んでいる危険を、できるだけたくさん見つけてください。
- 対策樹立: それぞれの危険に対して、どのような対策が考えられますか?
- 目標設定: この状況を防ぐために、私たちのチームが明日から実践する行動目標を一つ決めましょう。
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