基礎研修 第17回:遊びを通じた発達支援① 乳児期の遊び

遊びを通じた発達支援①
乳児期の遊び

赤ちゃんにとって「遊び」は、単なる暇つぶしではありません。それは、心と脳が成長するために不可欠な「栄養」です。様々なものに触れ、心地よい歌に耳を傾け、安全なおもちゃで世界を探求する。その一つひとつの経験が、赤ちゃんの脳の中に新しい道を作り、生きる力の土台を築いていきます。この記事では、乳児期の遊びの3つの柱を、より深く、具体的に学びます。

目次

1. 脳が喜ぶ!感覚遊びの重要性

赤ちゃんは、まず五感(触覚、視覚、聴覚、嗅覚、味覚)を通して世界を学びます。多様な素材に触れる「感覚遊び」は、脳の神経回路を密にし、思考力や創造性の土台を作る、非常に重要な活動です。様々な感触、音、見た目の違いを体験することが、脳にとって最高の刺激となります。

💧 水遊び

具体的な遊び方: コップからコップへ水を移す、葉っぱやおもちゃを浮かべる、手のひらで水面を叩いて水しぶきを立てるなど。

育まれる力: 温かい・冷たいといった温度、状態の変化を肌で感じます。「ものを落とすと沈む」「水は高い所から低い所へ流れる」といった、科学的な発見の芽を育みます。

⚠️ 安全への配慮: たった数センチの水深でも溺れる危険があります。必ず大人がそばにつき、絶対に目を離さないこと。誤飲しない大きなものを使い、体温低下に注意します。

🏞️ 砂・土遊び

具体的な遊び方: 泥団子を作る、山やトンネルを作る、乾いた砂と湿った砂の感触の違いを手で確かめるなど。

育まれる力: 乾湿による触感の違いを体験し、握る・つまむ・掘るといった多様な指先の動きが発達します。これは将来の巧緻性(こうちせい)に繋がります。

⚠️ 安全への配慮: 動物の糞尿などがない、衛生管理された砂場を使用します。遊び終わった後の手洗い・うがいを徹底し、目や口に砂が入らないよう見守ります。

🎨 粘土遊び

具体的な遊び方: ちぎる、丸める、伸ばす、叩いて平らにする。指で穴をあけたり、型抜きを使ったりするのも良いでしょう。

育まれる力: 自分の力が加わることで自在に形が変わる面白さを知り、創造性が育まれます。指先の筋肉を細かく使うため、脳への刺激も非常に多い遊びです。

⚠️ 安全への配慮: 小麦粉や米粉、野菜など、万が一口に入れても安全な素材の粘土を選びます。特に小麦アレルギーの有無は、事前に必ず確認してください。

📰 新聞紙遊び

具体的な遊び方: 思いきり破って音と感触を楽しむ、くしゃくしゃに丸めてボールにする、ちぎった新聞紙のプールにダイブするなど。

育まれる力: ビリビリという音(聴覚)やカシャカシャという感触(触覚)を楽しみ、ものが形を変える面白さを知ります。ストレス発散にも繋がります。

⚠️ 安全への配慮: インクを舐めすぎないよう長時間は避け、破った紙片の誤飲に注意します。紙で手などを切らないよう、見守りも必要です。

🌾 粉遊び

具体的な遊び方: 小麦粉や片栗粉などをトレイに入れ、指でなぞったり、山を作ったりします。少量の水を加えて、感触がどろどろに変わる様子を楽しみます。

育まれる力: 「さらさら」から「どろどろ」への状態変化の発見は、科学的な思考の芽生えに繋がります。

⚠️ 安全への配慮: アレルギー(特に小麦)の有無を確認します。粉を吸い込んだり、目に入ったりしないよう注意し、床が滑らないようにシートを敷くなどの対策をします。

❄️ 氷遊び

具体的な遊び方: 氷に直接触れたり、食紅で色を付けた氷が溶けていく様子を画用紙の上で観察したりします。

育まれる力: 「冷たい」という感覚や、固体から液体へ変化するという不思議な現象を体験します。

⚠️ 安全への配慮: 長時間触ると凍傷の危険があるため、短時間で終えます。誤飲しないよう、必ず子どもの口より大きいサイズの氷を使います。

🍮 寒天遊び

具体的な遊び方: ぷるぷるとした独特の感触を楽しみます。手で握りつぶしたり、スプーンや型抜きを使ったりして遊びます。

育まれる力: 日常ではあまり触れない独特の感触を楽しみ、好奇心を刺激します。力の加減によって崩れる様子から、力加減を学びます。

⚠️ 安全への配慮: 食紅など、口に入れても安全な材料で作ります。喉に詰まらせないよう、常に側で見守り、細かく崩れたものを口に入れないように注意します。

🎨 絵の具遊び

具体的な遊び方: フィンガーペインティングやボディペインティングで、絵の具の感触や色が混ざり合う様子をダイナミックに楽しみます。

育まれる力: 色彩感覚を養い、汚れることを気にせず自己表現する解放感や喜びを感じます。

⚠️ 安全への配慮: 舐めても安全な素材のフィンガーペイント用絵の具を選びます。アレルギーの有無を確認し、床が滑らないよう配慮します。

🧣 布遊び

具体的な遊び方: シルク、オーガンジー、フリース、タオル地など、様々な素材の布に触れて感触の違いを楽しみます。大きな布で「いないいないばあ」をしても喜びます。

育まれる力: 「すべすべ」「ふわふわ」といった多様な触感の違いを知ることが、脳の発達を促します。「いないいないばあ」は対象の永続性の理解に繋がります。

⚠️ 安全への配慮: 顔にかぶって窒息しないよう、「いないいないばあ」は必ず大人が行います。ほつれた糸などが指や首に絡まないよう、布の状態を常に確認します。

2. 心が通う!わらべうた・ふれあい遊びの実践

特別な道具がなくても、人と人とが触れ合うだけでできる最高のコミュニケーションツールです。心地よいリズムと温かい肌の触れ合いは、安心感や幸福感をもたらすホルモン「オキシトシン」の分泌を促します。これが愛着形成の核となり、自己肯定感の土台を築きます。

いっぽんばし こちょこちょ

指で子どもの手のひらや足の裏をつつき、歌に合わせて腕や足へ移動し、最後に脇の下などをくすぐります。

育まれる力: 「そろそろくすぐられるぞ」という予測と期待感、触れられる心地よさ、人とのやり取りの楽しさ。

ポイント: 目を合わせ、笑顔で歌いかけましょう。子どもの反応を見ながら、くすぐる強さを加減します。

ずいずいずっころばし

子どもの指を一本ずつ優しく握り、歌の終わりにどの指を握っているかを当てさせます。(乳児期は握られる感触を楽しみます)

育まれる力: 歌が終わるまで待つ力、自分の指先に意識を向ける集中力、触覚の刺激。

ポイント: 「どの指かな?」と優しく問いかけ、コミュニケーションを楽しみます。

3. 探求心を支える!安全な玩具の選び方・作り方

おもちゃは、赤ちゃんの「これなんだろう?」という探求心を支える大切な道具です。安全性を第一に、子どもの発達段階に合ったものを選びましょう。

安全な玩具選びの絶対条件

⚠️

誤飲しない大きさか?【トイレットペーパーの芯 テスト】

直径約3.8cmのトイレットペーパーの芯を通り抜けるものは、子どもの喉を完全に塞いでしまう大きさです。誤飲・窒息の危険性が非常に高いため、0~2歳児の周りには絶対に置かないようにしましょう。

  • 舐めても安全な素材か?
    玩具安全基準に合格した証である「STマーク」などを参考に、有害な化学物質や塗料が使われていないものを選びます。
  • 尖った部分や隙間はないか?
    角が丸く処理されているか、指を挟んで抜けなくなるような隙間がないか、大人の指で確認します。
  • 長いひも(22cm以上)が付いていないか?
    首に巻き付いて窒息する危険があるため、規定以上の長さのひもが付いた玩具は避けましょう。

身近な材料でできる!発達を促す手作り玩具

✨ センサリーボトル

作り方: 小さなペットボトルに水と洗濯のり(水とのり=1:1が目安)を入れ、ビーズやスパンコールなどキラキラしたものを加えます。キャップを接着剤で固く閉め、ビニールテープで巻いて完成。

遊び方: 中のキラキラがゆっくり動く様子を追視して楽しみます(視覚の発達)。落ち着きを取り戻すためのリラックスツールにもなります。

🎶 落ちないガラガラ

作り方: ヤクルト等の容器2本に、お米やビーズなど中身を少し入れ、口を合わせてテープでしっかり固定します。ヘアゴムなど、柔らかいゴムひもの輪っかを付けます。

遊び方: 振ると違う音が鳴るのを楽しみます(聴覚の発達)。手首に通せば、まだ物を握れない赤ちゃんでも手を動かして音を鳴らせます。

まとめ:最高の栄養は「楽しい」という共感

乳児期の遊びは、高価な知育玩具や難しいプログラムが必要なものではありません。身の回りにある、ちょっとした素材。昔から伝わる、温かいわらべうた。そして何よりも、子ども一人ひとりに寄り添い、「面白いね」「楽しいね」と心から共感する、私たち自身の存在。これらこそが、子どもの心と脳を育む、最高の栄養なのです。安全な環境の中で、赤ちゃんの「やってみたい」という気持ちを温かく見守り、応援していきましょう。

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