心と心を繋ぐ「橋」をかける専門技術
「子どもとの信頼関係を、もっと深めたい」「自分の言葉が、どうしてうまく伝わらないんだろう?」と感じていませんか?実は、上手なコミュニケーションは才能ではなく、誰でも身につけられる専門的な「技術」です。子どもたちの心に寄り添う「聴き方」と、私たちの思いが温かく伝わる「伝え方」を学ぶことで、子どもは安心して自分を表現できるようになります。この記事では、明日からすぐに実践できる「傾聴」「Iメッセージ」「リフレーミング」という3つの基本スキルを、具体的な会話例と共に分かりやすく解説します。
信頼の土台を築く「聴く」技術:傾聴の3つのステップ
コミュニケーションの主役は「話す」ことだと思われがちですが、実は「聴く」ことこそが信頼関係の土台を築きます。相手の言葉の奥にある、本当の気持ちを受け止める聴き方を「傾聴」と言います。
① 耳で聴く (Hear)
まずは相手の言葉を評価せず、そのまま受け止めます。「うんうん」という相槌や、「〜なんだね」と繰り返すことで、「聞いているよ」というサインを送ります。
② 目で聴く (See)
言葉にならない表情、視線、声のトーンから、相手の本当の気持ちを読み取ります。「大丈夫」という言葉と、こわばった表情の矛盾に気づくことが大切です。
③ 心で聴く (Feel)
「この子は今、どんな気持ちだろう?」と想像し、その感情に寄り添います。「悔しかったんだね」と気持ちを言葉にしてあげることで、子どもは安心感を得ます。
関係を壊す「Youメッセージ」と、関係を築く「Iメッセージ」
子どもに何かを伝える時、主語を「あなた(You)」から「わたし(I)」に変えるだけで、伝わり方が劇的に変わります。
Youメッセージ (相手を主語)
相手を評価・非難するニュアンスになり、反発を招きやすい言葉です。
- 「どうしていつも片付けないの!」
- 「またお友達を叩いて、悪い子だね!」
Iメッセージ (わたしを主語)
自分の気持ちを誠実に伝え、相手の自発的な行動を促す言葉です。
- 「おもちゃが床にあると、(わたしは)踏みそうで心配だよ」
- 「叩かれているのを見ると、(わたしは)悲しい気持ちになるな」
見方を変えれば、世界が変わる:肯定的な言葉かけ(リフレーミング)
リフレーミングとは、物事を見る枠組み(フレーム)を変え、違う視点で捉え直すことです。子どもの一見ネガティブに見える行動も、視点を変えれば素晴らしい長所に変わります。
| よくある見方(ネガティブなフレーム) | → | 新しい見方(ポジティブなフレーム) |
|---|---|---|
| 頑固で、言うことを聞かない | → | 自分の意志が強く、信念を持っている |
| 落ち着きがなく、チョロチョロしている | → | 好奇心旺盛で、行動力がある |
| 飽きっぽくて、集中力がない | → | 気持ちの切り替えが早く、興味の幅が広い |
| 神経質で、細かいことを気にする | → | 感受性が豊かで、物事を丁寧に観察できる |
| 消極的で、人見知りする | → | 慎重で、じっくり考えてから行動できる |
| おしゃべりで、うるさい | → | コミュニケーション能力が高く、表現力が豊か |
| 負けず嫌いで、すぐ悔しがる | → | 向上心が高く、何事にも真剣に取り組む |
【重要】これは単なる言い換え遊びではありません。私たちが子どもを見る「メガネ」そのものを掛け替えることです。私たちが子どもの長所に目を向けるようになると、子ども自身も自分の良いところに気づき、自己肯定感を高めていくことができます。
【実践練習】ケースで考えるコミュニケーション
<場面①:Iメッセージを使ってみよう>
おもちゃの取り合いで、A君がB君を叩いてしまいました。あなたがA君に声をかけます。「Youメッセージ」ではなく、「Iメッセージ」を使って、どのように伝えますか?
<場面②:リフレーミングをしてみよう>
Cちゃんは、新しい活動になかなか参加しようとせず、いつも遠くから様子をうかがっています。保護者からは「うちの子は引っ込み気味で心配です」と相談されています。
- Cちゃんのこの行動を、どのようにリフレーミングできますか?
- そのリフレーミングした視点から、保護者の方にどのような言葉で伝えますか?
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