信頼を守る「絶対的な約束」
「これくらい大丈夫だろう…」その一瞬の気の緩みが、子どもと家族を深く傷つけ、築き上げてきた信頼を破壊し、あなた自身のキャリアをも危険に晒します。コンプライアンスや情報管理は、単なる規則ではありません。それは、保護者との間に交わされた「決して裏切らない」という、専門職としての固い約束です。この記事では、その約束を守り抜くための具体的な知識と、SNS時代に潜む危険な落とし穴について、分かりやすく解説します。
目次
専門職の終生の義務:守秘義務
守秘義務とは、業務上知り得た個人や組織の秘密を、正当な理由なく外部に漏らしてはならないという、法律で定められた義務です。私たち支援専門職には、特に重い守秘義務が課せられています。
守秘義務の対象は、「業務上知り得た、子どもと家族に関するすべての情報」であり、その義務は退職後も生涯続きます。
情報漏洩の落とし穴:よくある危険な場面
公共の場での会話
電車や居酒屋で、同僚と利用者の話をすること。「壁に耳あり障子に目あり」です。
家族や友人への相談
「ちょっと聞いてよ」と、善意のつもりで家族や友人に具体的な話をしてしまうこと。
不注意な電話
周囲に人がいる状況で、個人情報を含む電話をすること。
「宝物」を守る技術:個人情報の具体的な管理方法
子どもたちの個人情報は、厳重に管理すべき「宝物」です。紙媒体と電子データ、それぞれの管理ルールを徹底します。
アナログ情報(紙媒体)
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保管: 個人情報書類は、必ず施錠できるキャビネットに保管する。机の上に出しっぱなしは厳禁。
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持ち出し: 原則、事業所外への持ち出しは禁止。やむを得ない場合は管理者の許可を得る。
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廃棄: 必ずシュレッダーで裁断してから廃棄する。
デジタル情報(電子データ)
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PC: 全てのPCにパスワードを設定し、離席時はスクリーンロックをかける。
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外部記憶媒体: 個人のUSBメモリは使用禁止。業務用のものは暗号化機能付きを使用。
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メール: 添付ファイルにはパスワードを設定し、宛先は指差し確認する。
一瞬で信頼を破壊する炎:SNS利用のリスク
個人のSNS(X, Instagram, Facebook, TikTokなど)の利用は、情報管理において最も注意すべき、現代的なリスクです。「プライベートな投稿だから大丈夫」という考えは、非常に危険です。
絶対NG!SNS投稿の具体例
- 子どもの写真や動画(顔を隠しても、後ろ姿でもNG)
- 子どもをモデルにしたイラストや、特徴的な作品の写真
- 施設内や、制服を着た職員の写真(背景からの特定リスク)
- 「担当してる子が…」といった、個人を推測させる投稿(匂わせ投稿)
- 「今日の支援、大変だったー」といった業務内容に関する愚痴や感想
【事例研究】ある職員の、たった一枚の写真から…
- 事の発端: ある職員が、子どもたちが作った可愛らしいハロウィンの制作物を、良かれと思って自分のInstagramに投稿した。制作物の一つには、子どもの少し珍しい名前が、ひらがなで書かれていた。
- 炎上の経緯: その投稿を見た職員の友人が、「〇〇保育園?可愛いね!」とコメント。職員はそれに「いいね!」で返信。そのやりとりを、たまたま同じ地域に住む人が発見し、「個人情報管理はどうなってるんだ?」とXに投稿したことで、瞬く間に情報が拡散。
- 結末: 保護者からのクレームが殺到。事業所は公式サイトで謝罪。投稿した職員は、厳重な処分を受けることになった。事業所が失った信頼は計り知れない。
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