基礎研修 第5回:保育所保育指針と保育の基本
「保育所保育指針」と聞くと、少し難しく感じるかもしれません。しかし、これは私たちの支援の「羅針盤」であり、子どもたちの育ちを支える上での「共通言語」です。この記事では、児童発達支援や放課後等デイサービスで働く児童指導員の皆さんが、日々の支援の専門的な意味を再確認し、自信と誇りを深めるための「保育の基本」を分かりやすく解説します。
1. 「保育」の土台の上に、「療育」の専門性を築く
私たちは「療育」という専門的な支援を行いますが、その優れた療育は、必ずしっかりとした「保育」の土台の上に成り立っています。療育とは、障害のある子ども一人ひとりの発達に合わせて、自立と社会参加を目指す治療的・教育的な働きかけのことです。
優れた療育は、安定した保育という土台の上に築かれます。
- 「養護」の上に「療育」は成り立つ: 子どもが安心して自分を表現でき、情緒が安定していること(養護)は、あらゆる療育的アプローチの大前提です。安心・安全な環境こそが、療育の土台です。
- 「教育(5領域)」の視点で「療育」は計画される: 個別支援計画で立てる療育目標も、「言葉」や「人間関係」といった保育指針が示す「5領域」の視点と深く繋がっています。
2. 保育の心臓部:「養護」と「教育」は一心同体
保育は、「養護」と「教育」という2つの側面が分けることのできない一体のものとして展開されます。これを「養護と教育の一体的な展開」と呼び、保育の最も重要な基本原則です。
心身の発達の助長
生命の保持と情緒の安定
養護という安定した土台があってこそ、教育という豊かな育ちが花開きます。
① 養護とは?【生命の保持と情緒の安定】
- 健康状態の観察と安全確保
- 快適な環境整備
- 食事や休息の保障
- 受容的・応答的な関わり
- 安定した信頼関係(愛着)の構築
② 教育とは?【心身の発達の助長】
- 5領域からの発達促進
- 主体的な遊びを通した学び
- 知的好奇心を引き出す経験
- 満足感や達成感の保障
- 生きる力の基礎を育む
【重要】養護と教育の一体的な実践例:食事の場面
食事の場面
養護
アレルギーに配慮し、喉に詰まらせないよう見守りながら、楽しい雰囲気で食事ができるようにする。
教育
「にんじんはオレンジ色だね」と話したり、スプーンを自分で使ってみようとする挑戦を応援したりする。
安心できる環境(養護)の中で、子どもの知的好奇心や挑戦する気持ち(教育)が育まれます。
3. 子どもの育ちの地図:「5領域」を理解する
保育所保育指針では、子どもの育ちをより深く理解するための「5つの視点」として「5領域」が示されています。これらは教科のように分かれているのではなく、互いに密接に関わり合いながら、遊びや生活の中で総合的に育まれていきます。
遊びや生活の中で、これらの領域は複雑に絡み合いながら育ちます。
| 領域 | ねらい(目指す姿) | 内容の例(私たちの支援) |
|---|---|---|
| ① 健康 | 心身の健康を維持し、自分の体を大切にする気持ちや、主体的に体を動かす楽しさを味わう。 | ・手洗いや歯磨きを丁寧に行い、生活リズムを整える。 ・鬼ごっこやダンスなど、多様な動きのある遊びを計画する。 ・「疲れたら休んでいいんだよ」と伝え、休息の大切さを教える。 |
| ② 人間関係 | 職員や友達との安定した関係の中で、愛情や信頼感を持ち、人と関わる楽しさを知る。社会生活における望ましい習慣や態度を身につける。 | ・「〇〇ちゃん、おはよう」と一人ひとりの存在を認め、愛着関係を築く。 ・おもちゃの貸し借りなどの葛藤場面で、互いの気持ちを代弁し、解決を助ける。 ・「ありがとう」「ごめんね」といった気持ちを、職員がモデルとなって示す。 |
| ③ 環境 | 身近な環境(自然、物、人、事象)に好奇心を持って関わり、それらを生活に取り入れて楽しむ。 | ・散歩に出かけ、草花や虫、季節の変化に触れる機会を作る。 ・様々な素材(積み木、粘土、水、砂など)に触れ、試行錯誤できるコーナーを用意する。 ・「どうして雨が降るのかな?」といった子どもの問いに、一緒に考え、図鑑で調べる。 |
| ④ 言葉 | 自分の気持ちを言葉で表現する楽しさを味わい、人の話を聞こうとする意欲を育む。豊かな言葉のやりとりを通して、表現力や思考力を育む。 | ・子どものつたない言葉を、最後までじっくりと聴く。 ・絵本の読み聞かせを毎日行い、物語の世界を共有する。 ・「嬉しいね」「悲しかったね」と、子どもの気持ちを言葉で代弁(言語化)する。 |
| ⑤ 表現 | 感じたことや考えたことを、自分なりに様々な方法(音、動き、絵、製作など)で表現する豊かさや楽しさを味わう。 | ・お絵描きや粘土遊びのコーナーを設け、自由に使えるようにしておく。 ・音楽に合わせて体を動かすリトミックなどを取り入れる。 ・子どもの作品を丁寧に飾り、「素敵な色だね」「面白い形だね」と具体的に褒める。 |
4. 環境は「第3の保育者」である
「子どもは、保育者から学び、子ども同士で学び、そして環境から学ぶ」と言われます。私たちが意図的に構成した環境は、子どもの発達を静かに、しかし力強く後押しする「第3の保育者」となるのです。
① 人的環境
人(職員)の存在そのもの
② 物的環境
意図的に整備された空間や物
人的環境のポイント
- 職員自身が穏やかで、笑顔でいる
- 子どものありのままを受け止める
- 肯定的な言葉かけをする
- 職員同士が尊敬し合う姿を見せる
物的環境のポイント
- 「動」と「静」のスペースを分ける
- 子どもの目線に合わせて物を配置する
- 発達や興味に合わせた遊具・教材を用意する
- 常に安全点検を行う
💡 リフレクション・ワーク
あなたの担当する部屋やスペースについて、「5領域」の視点から、物的環境をより良くするためのアイデアを一つ考えてみましょう。
(例)「表現」を豊かにするために…
いつでも自由にお絵描きができるように、壁の一部に大きな紙を貼り、様々な色のクレヨンを手の届く場所に置いておく。
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支援の質向上にお役に立てれば幸いです。

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