放課後等デイサービスで午後の自由遊びの時間、Aくん(5歳・ASD)がいつも一人でブロックを並べています。となりの部屋ではほかの子たちが「お医者さんごっこ」で盛り上がっているのに、Aくんは誘いに気づかないふりをして、ひたすら色別に積み木を並べ続けています。「誘えばいいのに」と思いながら、でもどう声をかければいいのか、うまく言葉が出てこなかった──そんな経験はありませんか。
3〜5歳の子どもたちにとって、この時期は「わたし」から「わたしたち」への大きな移行期です。でも、ASD・ADHD・知的障がいのある子どもたちにとっては、この移行がもっとゆっくりだったり、全く違う形で現れたりすることがあります。「遅れているから心配」ではなく、「その子なりのペースで、その子なりの道を歩んでいる」と理解する視点が、私たちの関わりの質を大きく変えます。
3〜5歳の「遊びの進化」──障がいのある子どもにとってどう見える?
この時期の発達で最もわかりやすく現れるのが「遊びの変化」です。一人遊びから、友達と一緒に遊ぶ「協同遊び」へと移行していきます。
| 遊びのステージ | 典型的な発達 | 障がいのある子どもに多い姿 | 支援のポイント |
|---|---|---|---|
| 平行遊び(2〜3歳) | 同じ空間でそれぞれが遊ぶ | ASD:この段階が長く続くことがある。一人の世界への集中が強い | 「一人で遊ぶ時間」を否定せず、横でそっと関わる |
| 連合遊び(3〜4歳) | 共通テーマで遊ぶが役割は曖昧 | ADHD:衝動的に割り込みやすく、遊びの流れを壊してしまうことがある | 割り込む前に「〇〇くんの番」を可視化する工夫を |
| 協同遊び(4〜5歳) | 役割分担・共通ストーリーで遊ぶ | 知的障がい:ストーリーの共有が難しく、自分のペースで動きやすい | 視覚的な役割カードや絵で「自分がやること」を明確に |
特にASDのある子どもは、集団でのごっこ遊びにうまく入れないことが多いです。これは「社会性がない」のではなく、「他者のイメージを瞬時に読み取り、合わせていく」というプロセスに難しさがあるから。誘いに気づかないのも、言葉の意図が伝わりにくいからかもしれません。
ASDのある子どもには、「ごっこ遊びに入って」より「今やっていることを一緒にやる」ところから始めると入りやすくなります。Aくんが積み木を並べているなら、隣に座って「こっちは青、あっちは赤にしようか」と声をかける。その小さな共有体験が、社会性の芽になります。
「なぜなぜ期」と認知発達──子どもの「どうして?」に隠れているもの
3〜5歳になると「どうして空は青いの?」「虫はどうして飛ぶの?」と矢継ぎ早に質問してくる「なぜなぜ期」が始まります。これは知的好奇心が爆発しているサインです。大切なのは、すぐに答えを教えることではなく、「なんでだろうね」と一緒に考える姿勢と、図鑑で調べるなど自分で答えを見つける方法を体験させてあげることです。
一方、ASDのある子どもの「なぜ」は、少し違う方向を向いていることがあります。「なんで今日は先生が違うの?」「なんでいつもと違う道なの?」──変化への不安から生まれる「なぜ」です。これは知的好奇心ではなく、「見通しを確保したい」という障がい特性からくるもの。同じ「なぜ」でも、背景が違うことを意識しておくと、関わり方が変わります。
✅ 好奇心からの「なぜ」→ 目が輝いている、答えに興味を持っている
⚠️ 不安からの「なぜ」→ 繰り返し同じことを聞く、表情が硬い、変化が起きたタイミング
この視点を持っておくだけで、「また同じことを聞いている」という対応から、「今、この子は見通しが持てなくて不安なんだ」という対応へと変わります。
就学準備は「ひらがなドリル」じゃない──非認知能力を育てる現場の関わり
5歳頃になると保護者から「ひらがなを練習させた方がいいですか?」と相談されることが増えます。専門職として明確に伝えたいのは、幼児期に本当に大切なのは「非認知能力」を育てることだということです。
テストでは測れない「生きる力」の土台──それが非認知能力です:
自制心・忍耐力
気持ちをコントロールし、やり抜く力
協調性
友達と協力して目標を達成する力
自己肯定感
「自分は大切な存在だ」と思える気持ち
意欲・主体性
「やってみたい!」と自分から動く力
障がいのある子どもにとって、この非認知能力は特に重要です。ASDのある子どもは感覚過敏や見通しの難しさから、集団の中で圧倒されやすい。ADHDのある子どもは衝動性から「またやってしまった」という経験が積み重なりやすい。こうした経験が重なると、自己肯定感が傷つきやすくなります。
「小学校に入ってから困らないように」という視点だけでなく、「今この子が自分を好きでいられるか」という視点で就学準備を考えることが大切です。
障がいのある子どもの就学準備で特に意識したいこと
困難が多い子どもだからこそ、「自分にもできることがある」という体験の積み重ねが大切です。ハードルを下げて成功体験を確保する工夫を、意識的に日常の支援に組み込みましょう。
ASDのある子どもは「次に何が起きるかわからない」ことが大きなストレスになります。絵や写真のスケジュールで「今日は何があるか」を視覚的に示すだけで、安心して過ごせる時間が増えます。小学校では時間割があることも、ポジティブに伝えられます。
就学への不安が強い子どもには、「給食は好きなものが出ることもあるよ」「体育館で遊べるよ」など、その子が好きなことに引き寄せた情報を伝えましょう。小さな期待感が、小学校への構えを和らげます。
「ケンカ」を成長のチャンスにする仲立ち
「友達のブロックを奪った」「押してしまった」──こうした場面は、3〜5歳の現場では毎日のように起きます。障がいのある子どもの場合、衝動性や感情調節の難しさからこうした行動が多くなることがあり、「また〇〇くんが…」と周囲から見られがちです。
でも、その子は「わるい子」なのではなく、「まだそのスキルが発達段階にある子」です。
特にADHDのある子どもは、衝動的に行動した後で自分でも「しまった」と思っていることが多いです。叱責より先に「何があったの?」と聞く一言が、その子との信頼関係を守ります。一人で抱え込まず、気になる行動のパターンはチームや管理者に共有しながら対応を考えていきましょう。
今日から一つだけ
忙しい現場で、発達理論をすべて意識しながら関わるのは難しいものです。でも、一つだけ試してみてください。
子どもが一人で遊んでいるとき、そっと隣に座って「何作ってるの?」と聞いてみる。
それだけで、「見てくれている大人がいる」という安心が生まれます。社会性は、その安心の上にしか育ちません。
毎日の現場で、子どもたちの小さな変化を見つけ続けているあなたの関わりが、確実に子どもの「生きる力」を育てています。
✅ 今日からの実践チェックリスト
☐ 一人で遊んでいる子の横に座り、「何してるの?」と声をかけてみた
☐ ケンカの仲立てで、両方の気持ちを先に受け取った
☐ 「できた!」をひとつ見つけて、その子に言葉で伝えた
☐ ASD・ADHDの障がい特性を踏まえ、遊びの声かけ方法を一つ工夫した
☐ 就学準備について保護者に「非認知能力」の視点を伝えた


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