基礎研修 第8回
乳幼児の発達③ 3~5歳児の社会性と就学準備
1. はじめに:「わたし」から「わたしたち」へ、広がる世界
1・2歳児期に「わたし」という強い自我を確立した子どもたちは、3歳を過ぎると、いよいよ「わたしたち」という仲間(社会)の世界へと冒険の舞台を広げていきます。この時期は、友達との関わりの中で、協力する喜びや、意見がぶつかる葛藤を経験し、人として生きていく上で不可欠な社会性の土台を築く、非常に重要な時期です。
また、心と体が大きく成長し、就学(小学校入学)という次の大きなステップを見据え始める時期でもあります。この研修では、心豊かで、ちょっぴり複雑な3~5歳児の内面を理解し、その社会性の育ちを支え、就学への期待感を育むための、私たちの専門的な関わりについて学んでいきましょう。
2. 遊びの進化:社会性を育む「ごっこ遊び」と「ルールのある遊び」
この時期の子どもの発達を最も象徴するのが「遊びの進化」です。一人で遊ぶことから、友達と一緒に遊ぶことへと、遊びの質が大きく変化します。
① ごっこ遊び・見立て遊びの発展
身近な人の役割を真似たり、積み木を車に見立てたりする遊びが、より複雑で物語性のあるものに発展します。
平行遊び
連合遊び
協同遊び
ごっこ遊びが育む力
- 想像力・創造力:自分ではない誰かになりきる力。
- 言葉の力:役になりきって会話することで語彙や表現力が豊かになる。
- 社会性・協調性:相手の気持ちを考えたり、自分の要求を伝えたりする力が育つ。
② ルールのある遊びの始まり
鬼ごっこや簡単なボードゲームなど、共通のルールを理解し、それを守りながら遊ぶことができるようになってきます。
ルールのある遊びが育む力
- 社会的なルールの理解:社会には守るべき約束事があることを学ぶ。
- 衝動のコントロール:自分の欲求をルールに従ってコントロールする力が育つ。
- 葛藤を乗り越える力:「負けて悔しい」という気持ちを乗り越える心の強さが育つ。
3. 心と頭の大きな成長:認知能力の発達
この時期は、物事を理解し、考え、記憶する力(=認知能力)も大きく成長します。
数の理解
「おやつを3つどうぞ」など、生活の中で数に触れる機会を作る。
文字への興味
持ち物に名前を書き、興味に寄り添う。無理に教え込まない。
時間の概念の芽生え
「おやつの後に」など、次の活動の見通しを言葉で伝える。
科学する心の芽生え
「なんでだろうね?」と問いを受け止め、一緒に図鑑で調べる。
他者の心の推測
葛藤場面で互いの気持ちを言葉にして翻訳し、橋渡しをする。
4. 就学へのなめらかな接続:今、大切にしたいこと
【注意】 就学準備とは、ひらがなや計算を前倒しで教え込む「早期教育」のことではありません。
それよりも、小学校以降の長い学びの土台となる「非認知能力」を育むことが、幼児期には何よりも大切です。
非認知能力とは?
テストの点数などでは測れない、人間としての「生きる力」の土台となる内面的な力のことです。(自己肯定感、意欲、協調性、自制心、創造性など)
これらの力は、ドリル学習ではなく、日々の豊かな遊びの中でこそ、最も効果的に育まれていきます。
私たちが就学に向けてできること
- 基本的な生活習慣の自立を支える。
- 小学校への期待感を育む。
- 自信をつける経験を豊かにする。
【グループワーク】(20分)
事例: 5歳のG君とH君が、積み木コーナーで一つの赤いブロックを取り合って、ケンカになってしまいました。G君は「僕が先に見つけたのに!」と主張し、H君は「僕だってお城を作るのに必要なんだ!」と言って譲りません。
<話し合いのポイント>
- この状況で、あなたはどのように仲立ちをしますか?
- まず、それぞれの子どもの気持ちをどのように受け止めますか?(具体的な声かけ)
- この葛藤を、子どもたちの社会性を育むチャンスと捉え、どのような解決策を子どもたち自身が考えられるように促しますか?
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