【基礎編】第4回「できた!」を育てる2つの科学的技術|プロンプトとシェイピング

【基礎編】第4回「できた!」を育てる2つの科学的技術

子どもの成功体験をデザインし、自立へと導くための科学的アプローチ、「プロンプト」と「シェイピング」を学びます。

目次

はじめに:どうすれば「できる」ようになる?

これまでの研修で、望ましい行動を増やすための「強化」の重要性を学びました。しかし、ここで一つの壁にぶつかります。

「そもそも、強化したい望ましい行動が、子どもから一向に出てこない場合はどうすればいいの?」

例えば、「ありがとう」と言ってほしいのに、子どもが全く言わない。このままでは、褒めてあげる(強化する)機会が永遠に訪れません。

このような時に使うのが、新しい行動やスキルを教えるための積極的な技術です。今回は、子どもが成功体験を積みながら、着実に「できる」ようになるための2つの強力なテクニック、「プロンプト」と「シェイピング」を学びます。

① プロンプト:「できた!」を導く優しい手助け

プロンプト(Prompt)とは?

子どもが課題を正しく遂行できるように、支援者が行動の前や行動の最中に与える「手助け」や「ヒント」のことです。

目的:エラーレス・ラーニング

子どもの間違い(エラー)を最小限に抑え、成功体験を確実に作ることが目的です。成功した直後にすかさず褒める(強化する)ことで、学習のスピードを格段に上げることができます。「間違い → 叱られる」という経験は子どものやる気を削いでしまうため、この負の学習サイクルを防ぐことが重要です。

🤝

成功へ導く

プロンプトの種類(手厚い順)

プロンプトには、手助けの度合いに応じて様々な種類があります。これを「プロンプトの階層性」と呼びます。上にあるものほど手厚い(介入度が高い)サポートです。

① 身体プロンプト (フルプロンプト)

手取り足取り、子どもの体を動かして行動全体を補助する最も手厚い手助け。
例:子どもの手に自分の手を重ね、ブロックを掴ませて箱まで運び、入れさせる。

② 部分的身体プロンプト

肘や背中を軽く押すなど、行動のきっかけを少しだけ身体的に補助する。
例:子どもがブロックを持ったまま止まっていたら、肘を「トン」と軽く押して箱の方向へ促す。

③ モデルプロンプト

支援者が「こうやるんだよ」と、正しい行動を見本としてやってみせる。
例:支援者が子どもの前で、ブロックを一つ拾って箱に入れてみせる。

④ ジェスチャープロンプト

指差しや身振りで、次に何をすべきかヒントを与える。
例:支援者が、ブロックと箱を交互に指差して、行動を促す。

⑤ 言語プロンプト

「~してね」という直接的な指示や、「次は何だっけ?」のようなヒントを言葉で与える。
例:「ブロックを箱に入れてね」と言う。または子どもが止まっていたら「どうぞ」と声をかける。

⑥ 視覚プロンプト

写真や絵カード、文字などで、やるべきことを視覚的に示す最も自立に近いヒント。
例:箱の上に、ブロックを箱に入れている写真カードを貼っておく。

【最重要】フェイディング:そっと手を放す技術

フェイディング(Fading)とは?

子どもがスキルを覚え始めたら、プロンプト(手助け)を徐々に減らしていくことです。

なぜ必要?

フェイディングをしないと、子どもが「プロンプト待ち」の状態になり、自発的に行動できなくなってしまいます(これをプロンプト依存と言います)。私たちの最終目標は、あくまで子どもの自立です。プロンプトは、自立のための一時的な「補助輪」なのだと、常に意識してください。

方法:基本的には、身体プロンプトのような手厚い手助けから、ジェスチャーや視覚プロンプトのような、よりヒントの少ないものへと段階的に移行していきます。

【実践ワーク】フェイディング計画を立ててみよう!

課題:まだ一人でコップを持てない子に、「コップで水を飲む」ことを教える。

この子に、最終的に一人でコップを持って水が飲めるように、プロンプトのフェイディング計画を立ててみましょう。身体プロンプトから始めて、どのようにヒントを減らしていくか、具体的なステップを考えてみてください。

【フェイディング計画の例】

  1. 身体プロンプト:手を添えて一緒にコップを持ち、口まで運ぶ。
  2. 部分的身体プロンプト:手首を支えるだけにする。
  3. ジェスチャープロンプト:子どもがコップを持ったら、口元を指差す。
  4. 言語プロンプト:「どうぞ」の声かけだけで飲むように促す。
  5. 自立!

② シェイピング:「小さなできた!」を繋ぐ技術

🪜

一歩ずつ育てる

シェイピング(Shaping)とは?

目標とする行動を、達成可能な非常に小さなステップ(スモールステップ)に分解し、目標に少しでも近づく行動が見られたら、それをすかさず強化していく方法です。日本語では「行動形成法」や「逐次近似法」と呼ばれます。

どんな時に使う?

  • 目標とする行動が複雑な時。(例:靴紐を結ぶ、長い文章を話す)
  • 子どもが、その行動を全く自発的に行わない時。プロンプトを使っても難しい時。

シェイピングの進め方(例:発語)

最終目標:自分の名前「やまだたろう」と言える

出発点

「あー」「やー」など、何らかの声を出せたら褒める。

ステップ①

「や」に近い音が聞こえたら褒める。

ステップ②

「やま」「やまだ」が言えたら褒める。

🏆 目標達成!

「やまだたろう」が言えたらたくさん褒める。

シェイピングを成功させるコツ

🎯

① 到達可能な目標から始める

まずは、子どもが今すでにできている行動、あるいはそれに非常に近い行動から始めます。

👍

② 小さな進歩を見逃さず強化する

目標に少しでも近づいたら、すかさず、分かりやすく褒めます(強化します)。

📈

③ 基準を少しずつ上げていく

一つのステップが安定したら、前のステップはもう褒めず、次の、より目標に近い行動だけを褒めるようにします。

🧘

④ 焦らず、時には戻る勇気も

うまくいかない時は、ステップが大きすぎたのかもしれません。一つ前のステップに戻って、成功体験を積ませることも大切です。

補足:シェイピングの各ステップで、モデルプロンプト(「やま」と言ってみせる)などを組み合わせると、より効果的です。

NPO法人世田谷スポ・レクネット

児童発達支援・放課後等デイサービスの事業所の方へ

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支援の質向上にお役に立てれば幸いです。

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