【ABA理論・第6回】問題行動への対応:代替行動と分化強化で支援を組み立てる

【ABA理論・第6回】問題行動への対応:代替行動と分化強化で支援を組み立てる

前回の記事では、問題行動を「困った行動」として見るだけでなく、その行動が何を伝えているのかを読み取る機能的アセスメントについて整理しました。

機能とは、その行動が子どもにとってどんな役割を果たしているか、という意味です。たとえば、泣くことで欲しいものが手に入るなら要求、泣くことで課題から離れられるなら逃避、泣くことで大人が近づくなら注目の機能を持っているかもしれません。

では、行動の機能が見えてきたら、次に支援者は何をすればよいのでしょうか。

ここで大切なのは、問題行動をただ「やめさせる」ことを目標にしないことです。もちろん、安全を守るためにすぐ止めなければならない行動はあります。けれど、根本的な支援では、その行動の代わりになる、より安全で伝わりやすい行動を教える必要があります。

今回のテーマは、問題行動への介入です。介入とは、行動が変わるように環境や関わり方を計画的に調整することです。叱ることや注意することだけが介入ではありません。子どもが別の方法で伝えられるように教え、その行動を育てることが、ABAにおける介入の中心になります。

目次

問題行動を消す前に、代わりの方法を渡す

問題行動への対応で最も大切な原則は、代替行動を教えることです。

代替行動とは、問題行動の代わりに、同じ目的を達成できるより適切な行動のことです。たとえば、おもちゃを奪う代わりに「貸して」と言う。奇声を出す代わりに「先生、見て」と伝える。課題を破る代わりに「休憩したい」とカードで伝える。こうした行動が代替行動です。

子どもは、困らせるために問題行動を使っているとは限りません。今持っている方法の中で、その行動が一番早く目的を達成できるから使っている場合があります。

たとえば、課題が難しい時にプリントを破る子がいたとします。プリントを破ると支援者が駆け寄り、課題が中断され、結果として難しい場面から離れられる。この経験が続くと、子どもにとってプリントを破る行動は「困った時に逃げる方法」として機能してしまいます。

この時に「破らないで」と言うだけでは不十分です。子どもは、難しい時にどうすればよいのかをまだ学んでいないからです。代わりに「手伝って」「休憩したい」「もう一回教えて」と伝える方法を教える必要があります。

問題行動をなくす支援ではなく、子どもの行動のレパートリーを増やす支援。この発想が土台になります。

機能別に代替行動を考える

代替行動は、問題行動と同じ機能を持っている必要があります。ここがとても重要です。

逃避の機能を持つ行動に対して、注目を得る代替行動を教えても、子どもにとって使う理由がありません。要求の機能を持つ行動に対して、ただ「座って待つ」だけを教えても、欲しいものを伝える方法にはなりません。

機能に合った代替行動を考えると、次のようになります。

機能 問題行動の例 教えたい代替行動
要求 他の子のおもちゃを奪う 「貸して」と言う、貸してカードを渡す
注目 大きな声を出す 「先生、見て」と呼ぶ、肩を軽く叩く
逃避 課題プリントを破る 「手伝って」「休憩したい」と伝える
感覚 手を噛む 噛める道具や感覚遊びを安全に使う

ここで気をつけたいのは、代替行動は子どもにとって使いやすいものである必要があることです。

言葉で伝えることがまだ難しい子に、いきなり長い文章を求めると、代替行動の方が大変になってしまいます。最初はカードを渡す、指さす、短い言葉を言う、手を挙げるなど、その子が成功しやすい形にします。

問題行動よりも代替行動の方が簡単で、確実で、早く伝わる。この条件がそろうと、子どもは新しい方法を使いやすくなります。

問題行動から代替行動へつなげる流れ

分化強化とは何か

代替行動を教える時に使う中心的な考え方が、分化強化です。

分化強化とは、いくつかの行動の中から、増やしたい行動を選んで強化する手続きです。強化とは、その行動が今後も起きやすくなるような結果を与えることです。ほめる、関わる、手伝う、希望する活動につなげるなど、子どもにとってその行動を続けたくなる結果を用意します。

分化強化では、望ましい行動にはしっかり反応します。一方で、問題行動によってこれまで得られていた強化子は、できる範囲で与えないようにします。

ここでいう強化子とは、その行動を増やす力を持つものや関わりのことです。注目が強化子になる子もいれば、休憩、好きな活動、感覚刺激が強化子になる子もいます。

分化強化は「よい行動だけをほめる」という単純な話ではありません。子どもがなぜその行動をしているのかを見たうえで、目的に合った代替行動を育てるための手続きです。

DRA:代替行動を強化する

DRAは、代替行動分化強化と呼ばれます。問題行動の代わりになる、より適切な行動を強化する方法です。

たとえば、支援者が他の子と話している時に、子どもが奇声を出す場面を考えます。機能が注目だと仮定するなら、教えたい代替行動は「先生」と呼ぶ、肩を軽く叩く、カードを渡すなどになります。

この時、子どもが静かに「先生」と呼べたら、支援者はすぐに振り向き、「呼んでくれてありがとう。どうしたの」と関わります。代替行動を使った時に、確実に注目が得られるようにするのです。

反対に、奇声を出した時に毎回強く反応すると、奇声が注目を得る方法として残りやすくなります。もちろん危険がある場合や周囲に大きな影響がある場合は安全対応が必要です。ただ、注目が機能であると考えられる行動では、必要以上に表情を変えたり、長く説得したりすることで、かえって行動を強めることがあります。

DRAのポイントは、代替行動を問題行動よりも便利にすることです。子どもが新しい方法を使った時に、早く、分かりやすく、確実に目的が達成されるようにします。

DRI:両立できない行動を強化する

DRIは、拮抗行動分化強化と呼ばれます。少し難しい言葉ですが、意味は「問題行動と同時にはできない行動を強化する」ということです。

たとえば、手を叩く行動が多い子に対して、両手を使う粘土遊び、ビーズ通し、ブロック作りなどを取り入れる場合があります。両手で粘土をこねている間は、手を叩くことは物理的にできません。このような両立しない行動を強化するのがDRIです。

DRIは、行動を直接止めるというより、別の活動に自然に置き換える考え方です。手を使った活動に取り組めた時に「集中して作れたね」「両手を上手に使っているね」と強化し、その時間を少しずつ増やしていきます。

ただし、子どもにとってその活動が苦痛であれば続きません。感覚的に楽しい、達成感がある、支援者と共有できるなど、その子に合った活動を選ぶことが大切です。

DRO:問題行動が起きなかった時間を強化する

DROは、他行動分化強化と呼ばれます。問題行動が一定時間起きなかったことを強化する方法です。

たとえば、平均して5分に1回席を離れる子がいるとします。最初から「30分座ろう」と求めても難しいかもしれません。そこで、まず3分など短い時間を設定します。3分間席を離れずに過ごせたら、「3分座れていたね」と強化します。成功が続けば、少しずつ時間を伸ばします。

DROは、特定の代替行動をすぐに決めにくい場面で使いやすい方法です。ただし、DROだけでは「困った時にどうすればよいか」を教えきれないことがあります。そのため、DRAと組み合わせ、必要な代替行動も同時に教えることが多くあります。

たとえば、離席しなかった時間を強化しながら、「休憩したい時はカードを出す」という代替行動も教えると、子どもは我慢だけでなく伝え方を学べます。

分化強化の3つの使い分け

消去とは何か

分化強化と一緒に理解しておきたいのが、消去です。

消去とは、これまで問題行動を維持していた強化子を与えないようにする手続きです。たとえば、注目が機能の奇声に対して、奇声のたびに大人が長く反応していたなら、その反応を減らすことが消去に近い対応になります。

ただし、消去は「無視すればよい」という意味ではありません。ここはとても誤解されやすいところです。

安全に関わる行動、自傷や他害、飛び出し、物を投げる行動などは、まず安全確保が必要です。また、子どもが本当に苦痛を感じている場合に、ただ反応を減らすだけでは支援になりません。

消去を考える時は、必ず機能的アセスメントとセットで見ます。何がその行動を強化しているのかを見極め、その強化子を問題行動ではなく代替行動に結びつけることが大切です。

つまり基本は、「問題行動では目的が達成されにくい」「代替行動なら目的が達成されやすい」という環境を作ることです。

消去バーストを知っておく

消去を始めた直後に、問題行動が一時的に強くなったり、回数が増えたりすることがあります。これを消去バーストと呼びます。

消去バーストとは、これまで行動によって得られていた強化子が急に得られなくなった時、子どもが「いつもの方法が効かない」と感じ、さらに強く試す現象です。

たとえば、これまで大声を出すとすぐに大人が振り向いていた子がいるとします。支援方針を変え、大声には必要最小限の反応にし、静かに呼んだ時だけすぐ振り向くようにしたとします。すると最初の数日は、大声がさらに大きくなるかもしれません。

ここで支援者が根負けして、前より強い行動にだけ反応してしまうと、子どもは「もっと強くやれば伝わる」と学習してしまいます。これは支援者にとっても子どもにとってもつらい結果になります。

だからこそ、消去バーストが起きる可能性は事前にチームで共有しておく必要があります。どこまでなら計画通りに対応するか、どの行動が出たら安全対応に切り替えるか、誰が記録するかを決めておきます。

消去バーストは、支援者一人で抱えるものではありません。チームで同じ方針を理解し、一貫して対応することが必要です。

介入計画を立てる時の順番

問題行動への介入は、勢いで始めるより、順番を決めて考えると整理しやすくなります。

  1. 標的行動を具体的に定義する。
  2. ABCデータから機能の仮説を立てる。
  3. 同じ機能を持つ代替行動を決める。
  4. 代替行動をどう教えるか決める。
  5. 代替行動が出た時の強化を決める。
  6. 問題行動が出た時の安全対応と強化しない対応を決める。
  7. 記録を取り、変化を確認する。

この順番を守ると、支援が「その場の注意」だけになりにくくなります。

たとえば、課題を破る行動の機能が逃避だと考えられるなら、代替行動は「休憩カードを出す」「手伝ってと言う」などです。代替行動が出たら、すぐに短い休憩や手助けを提供します。一方で、課題を破った時には、必要以上に長く説得せず、安全に片づけたうえで、落ち着いてから代替行動を促します。

このように、何を強化し、何を強化しないかを事前に決めておくことが大切です。

NG対応とOK対応

NGになりやすい対応 OKに近づける対応
問題行動を止めることだけを目標にする 同じ機能を持つ代替行動を教える
代替行動が難しすぎる 子どもがすぐ使える簡単な形にする
問題行動にだけ大人が強く反応する 代替行動にこそ早く、分かりやすく反応する
消去を「無視」と考える 安全確保をしたうえで、強化子の流れを変える
一人の支援者だけで対応する チームで方針、記録、安全基準を共有する

新人指導員が特に意識したいのは、「代替行動が使えた時を逃さない」ことです。問題行動が起きた時には目立つので、どうしても大人の反応が集まりやすくなります。一方で、子どもが小さな声で「手伝って」と言えた時、静かにカードを渡せた時、短い時間座っていられた時は見逃されやすいものです。

支援を変えるためには、望ましい行動が出た瞬間に気づき、すぐ強化する必要があります。

個人ワーク:DRAの支援計画を作ってみる

次の場面を考えてみてください。

課題の時間、Aくんは難しい問題が出ると、机の上の筆箱を床に落とします。すると支援者が駆け寄り、「どうしたの。一緒にやろうか」と声をかけ、課題を手伝います。Aくんはその後、課題を続けられることもありますが、筆箱を落とす行動は何度も起きています。

次の項目でメモしてみましょう。

  1. この行動の機能は何だと考えられるか。
  2. 教えたい代替行動は何か。
  3. 代替行動が出た時、支援者は何をするか。
  4. 筆箱を落とした時、どのように安全に対応するか。
  5. チームで共有しておくことは何か。

この例では、機能は逃避または援助要求の可能性があります。つまり、難しい課題から離れたい、または手伝ってほしいというメッセージかもしれません。

代替行動としては、「手伝ってください」と言う、ヘルプカードを出す、難しい問題に印をつけるなどが考えられます。代替行動が出た時には、すぐに「教えてくれてありがとう」と伝え、短く手助けします。筆箱を落とした時には、安全に拾いながらも、長い説得や大きな反応で強化しすぎないようにします。

ポイントは、助けを求める行動の方が、筆箱を落とすよりも早く支援につながるようにすることです。

明日から試せる一歩

明日からできる一歩は、問題行動を見た時に「代わりに何を教えるか」を一つ考えることです。

叩くなら、何を伝えたかったのか。叫ぶなら、何を得たかったのか。逃げるなら、何から離れたかったのか。そこから、同じ機能を持つ代替行動を考えます。

問題行動への対応は、厳しく止めることだけではありません。子どもがよりよい方法で伝えられるように、使いやすい新しい行動を教えることです。

代替行動を教え、分化強化で育て、必要に応じて消去の考え方を使いながら、強化子の流れを変えていく。これが、ABAに基づく問題行動への介入の基本です。

子どもの行動を変えるということは、子どもを大人の都合に合わせて動かすことではありません。子どもが安全に、伝わる方法で、周囲と関われるように支援することです。そのための計画を立てる力が、次回扱う個別支援計画と記録につながっていきます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次